職種ごとの人間性の偏りってものすごくある
私はこれまで色々な仕事・アルバイトをしてきました。
映画のシナリオを書く上で各種職業を覗いておいた方が役立つだろうという事もあり、なるべく違う職種を選んで仕事をしていたのですが、結果非常に感じたのは各職種によって人や雰囲気などの一定の特徴、”色”ってのが確実にあるなぁという事でした。
そういった職種ごとの特徴などもこのブログで案内できればと思いますので、(守秘義務などもあって全部は語れませんが)大丈夫な範囲で紹介していきます。
ライフガードのお仕事(海編)
まず一回目の今回は海やプールでお客さんを見張っていざという時には救助に向かう「ライフガード」というアルバイトをやった時の話です。
事務職ではなく季節限定の肉体労働なので突出して他より特徴のある仕事ですが、私はこの仕事の中で数回自分の゛死“を目前にしました。
人生の中で死と紙一重だったことは結構何度もありますが、1つの短期間の仕事中に何度も死にそうになるというのは少し珍しいかもしれません。
という訳でまずは「海のライフガード」で死にそうになった話を何回か連続で書きます。
(※請け負っている会社や地域によって多分仕事内容や様子は違うと思いますのであくまで私が入ったバイト先の会社での内容という事でご参照下さい)
これがライフガードだ!
(とりあえずは仕事内容などの紹介や特色から・・・)

使用アイテムの中で多分、意外と知られていなくて私が一番感銘を受けたのは「レスキューチューブ」です。
非常に便利で海に行く際にはプライベートで1つ欲しいくらいです。売ってるのは見たことないけど・・・。
浮輪だと沖で泳ぐ際にかえって邪魔になって自由に泳げまわれないし、でも何も持たないで沖に行くのは流石に危ない。
そこへいくと、このチューブはたすきがけに紐でつながっているから普段泳ぐ際には放し飼いのように後ろに浮かばせておいて、疲れたら手繰り寄せてつかまったり、本当に危ない時はチューブ自体を体にベルトのように巻いて装着すれば絶対に沈むことはありませんので非常に安心です。

仕事の内容としては、もちろん遊泳者が溺れないように見張ったり注意したり、いざ溺れたら救助に向かったりというイメージ通りの事から、海岸のゴミ箱のごみ回収やけが人の手当て、迷子の案内、観光客の人数や海水温をカウントして役所の観光課に伝えたり…意外とお役所絡みの仕事も多かったりします。
私はバイトとしてひと夏やってみただけですが、正直、日本の湿気は異常に高くて暑いのでその期間をアホみたいYシャツにネクタイして働くのがバカらしいと思えます。
夏の間中海パン一丁で過ごせるというのは本当に気持ちがいい。
このバイトの会社はインチキワンマン社長で、そこへアルバイトの若者が大挙して応募してきて、基本的には大部屋で住み込みで生活しながらひと夏を過ごさせるというものでした。
(募集告知と大幅に待遇が違うなどいわゆる今で言うブラック企業だったので、そういう話でも書きたい事はたくさんあるのですがその辺はいずれまた)
The Private Beach
海は広いのでほとんどのライフガードが大きなメインビーチで仕事をするのですが、一か所メインビーチから離れたところに幅30mほどの、まるでプライベートビーチのような小さな浜での仕事がありました(同じ会社内で持ち回りで担当を変わっていた)。
浜には海の家が2店だけ(浜の両端に1店づつ)と、中央にライフガード用の監視塔が1つあるだけの静かで落ち着いた(若者には地味でつまらない)小さな小さなビーチです。

私はこの浜を任されて仕事をすることが多く、その浜の監視塔には2人のライフガードがいるので私と他1人の合計2人で毎日他のバイト仲間達とは離れて仕事をしていました。
そこはメインビーチと離れているので社長の目が届かずバイトだけで自由勝手にやれるという特権があった為、私がそこを希望して喜んでやっていたというのがありますが、なぜ社長が来ないかというと実は2店の海の家の片方がヤ〇ザの直営するお店だったから関わり合いを避けていたようです。
その地域は誰もがよく知る大きな指定暴〇団のお膝元であり、海の家の1つがその組の出店らしいのです。
(※お店にはショボいおじさんが一人で店番してるだけで、まず一見してそんな恐ろしい経営者が後ろに控えているとは到底思えない感じでした)
インチキ社長が言うには「地元の堅気には手を出さないから安心して大丈夫」との事でしたが、その割には何が何でもそこは避けて来ようとしません。笑
一方で私は「ヤ〇ザが浜に来るわけじゃないし、たかがアルバイトのライフガードにいちいち絡んでくることもないだろうし、それよりひと夏ほぼ自分のプライベートビーチで自由に謳歌できる」という幸せを選んで大喜びで働いて(遊んで)いたのです。
浜にはほとんど人(水泳客)は来ないし、来ても小さい子供連れのファミリー層なので沖に出ることもなく、あまり見張りも注意も必要がなくて、私はもう一人のライフガードと交代でしょっちゅう沖へ泳ぎに行って真夏の海を満喫していました。

「一年が全部夏でこの仕事がずっとあるなら正直こんな楽しい仕事はやめられないな」
本気でそう思いましたね。映画制作が無ければの話ですけど。
でも、もちろんラクで楽しいだけではありません。
人の命を預かる責任感は重いしプレッシャーに感じたりもしました。
(一日が終わると日焼けで体力を奪われているのと、泳いで疲れるのと、何より命を見張っている緊張感で、慣れないうちはグッタリと疲れます。)
そして何より海難事故から人を救う為には、もちろん自分自身が泳ぎが達者でなくてはなりません!
ここのバイトは他の地域のそれとはもしかして違うかもしれませんが仕事終わりの夕方に頻繁に泳ぎの【特訓】が行われました!!!!!
私は球技全般とかアクロバットは得意でしたが・・・「泳ぐ」って事に関しては全く別物でした。これは本当に陸上のあらゆる競技とはまったく違う才能を要すると今でも思います。
剣豪たちと小作農
まず若いころの私は体に脂肪がほとんどなくて骨と筋肉と皮のみで構成されていたので、水に全然浮かなくて常に水をかいて浮かんでいなくてはならないから大変です。
水泳用の筋肉も付いてないので無駄な動きが多くほんの少し泳げば息が切れるし、クロールに至っては泳いでいる間は息を止めてなくてはなりません。
これは全力で運動する競技としては致命的です。
そして、このバイトに参加しているメンバーですが・・・当然ライフガードをやろうと思うような連中ですから、泳ぐのが得意とか好きな連中が集まり選ばれています。
「水泳部の部長」
「若いのにトライアスロンに出場しまくってる筋肉と体力の塊」
「サーフィン好きで毎日海にいるサーファー」
彼らと私の泳力の差をもし侍の強さの差で表現するとしたら次の様な感じです。

そしてここの仕事の特徴として、時々近くのプールや夕方の海で「水泳の特訓」が行われた事です。
小作農レベルごときが武蔵や小次郎レベルと一緒のレベルで泳がされるのだから非常に辛いものがあります。はっきり言って毎回が地獄でした。
ところがもっと上を行く本当の地獄があったのです。
川を泳いでを逆上せよ!(死を目前にした話)
ある日いつもと違う場所へ行き、海へと注ぐ「河口近くの川」で特訓が始まりました。
その内容というのは次の図の通り、全員が縦一列で順番に泳いでいったん河を下ってからUターンし、ここから川を逆上して対岸のゴールに向かうというものです。
まさにこれこそが本物の地獄!
タイトルにある通り、私が命をほぼ失いかけた日でした。

やってみてわかったのですが、この水の流れを逆流して泳ぐという訓練は泳力の低い人間を圧倒的に鍛えるか殺すかの究極のものです。
例えば陸上競技のマラソン(仮に10km)で極端に実力の違う2人が競って走ったとしましょう。
マラソンが得意なA君は速く楽しく走り切り、足の遅いB君は苦しく遅いタイムでゴールする事でしょう。
これはB君にとって大変な様に思えますが、別な考え方をすればB君はA君に比べて同じ距離をゆっくり走ってゴールしてるわけですから、むしろ楽だとも言えます。
ところが水泳で逆流訓練の場合は少なくとも水流の速さより速く泳がないとゴールするどころか下手するとどんどん後退していってしまう訳で、シャカリキで全力で泳いでも水流に戻されるので実質的にはもの凄く長い距離を泳ぐことになる訳です。
これは本当に本当に地獄です。

これを先ほどの陸上競技のマラソン(10km)に当てはめて考えると、走りが達者な人間は約10kmちょいを走れば良いが、走りが遅い人間は動く歩道を逆走して走るようなものなので、実質的には10kmでなく30kmも40kmも走ることになりえる訳です。しかも100m走のごとく絶えず全速力で!!
こんな地獄はありません・・・。
ライフガードが溺れる時
訓練時に話を戻します。
最初の川の流れを下る時点では楽しかったのですよ。
クロールの1かきでスイーッと進んで、まるで自分が武蔵や小次郎になったかと錯覚をおこすほどの速やかなスピード感です。
ところがUターンして流れに逆泳し始めるとビックリです。
川というのは目で見ると穏やかに見えるのに中に入って体感すると実に速い!
優雅に気取って泳いでいたらとても前に進めるような流れではありません!
慌ててスイッチをドライブモードに切り替えて100mダッシュ級の猛スピードで泳ぎ始めました。
エネルギーが切れる前に一気にゴールにたどり着かないと私の場合は大変な事になるとなんとなく悟っていましたが、でも河のスピードには勝てずに・・・次第に全力クロールに疲れ・・・疲労で息継ぎがもたなくなり・・・最終的にクロールをあきらめて平泳ぎで顔をあげながら泳ぎ始めました。
ライフガードがスピードの出ない平泳ぎで泳ぐというのはとても恥ずかしい事でしたが、しかしもうそんな事を言ってられない位の限界でした。
平泳ぎをする事で息継ぎ問題は解決したものの、肝心のスピードが全くないので私はただただ平泳ぎで河を流されるだけの人になってしまいました。
こうなると歩いてでもゴール地点まで行かないと帰れません。
仕方なく泳ぐのは諦めて立って歩いて帰ろうとした時です。
「ガホッ!?」
立ち上がったつもりが足がつかずに水に顔が沈み込んでしこたま水を飲み込みました。
「やばい!!」
川の浅瀬で水泳訓練してると思っていたら、流されているうちにいつのまにか足の届かない位の深い場所まで流されていたのです!
海へつながる河口近くでの訓練だったので、泳ぐ背後にはもう海がすぐそばまで迫ってきました。
海まで流されてしまったらもう終わりです。

パニック・パニック
私はパニックに陥りました。
人間が溺れる時というのは大半はパニックが原因です。
立とうとして足がつかなかった時点でパニックですし、海へ流されたらもう助からないという恐怖が更に慌てさせてもうまともに泳ぐことが出来なくなったのです。
これはマジでまずい!という事で必死に手を振ってバイト仲間たちに助けを求めました。
ライフガードに救助されるライフガードってのもどうかと思いますが、まあ私の場合はお金をもらって水泳が上手くなる事こみの、お得で楽しいバイト感覚だったのでライフガードとしてのプライドなどは微塵も持っていません。
彼らはすぐに私に気が付いて、そのうちの2人のライフガードが僕の方に泳いで向かってきました。
とにかく助けが向かってくる姿を見てホッと胸をなでおろしながら、少しでも流れていかないように必死にもがいていましたが・・・


彼らは私なんか見向きもせずに泳いで通り越して行ってしまったのです!!
実は私の後続には女子のセーバーがいて、体力に劣る女の子が何人か私と同じように流れに逆らえず流されていたのでした。
クソ野郎とお姫様の両方が溺れていたら、そりゃ男なら間違いなくお姫様を助けに向かうに決まってます。私でもそうします!
・・・という事で完全にシカトされた私は一人むなしく流されて海へと向かっていきました。
「ああ・・・こりゃマジで死んだな」
と、この時はあきらめて本気で死ぬ覚悟をしました。
もがいてしこたま水を飲んでたし、恐怖で力みまくってまともに浮くのも難しくなってきていたからです。
そしてもうダメだと思った最後の瞬間・・・急に足が地面について辛うじて立ち上がることが出来たのです。
海へとつながるギッリギリ最後の浅瀬にちょ~ど上手い事流れて岸に上がれたのです!!
猛烈な吐き気と立ち上がれない程の虚脱感
溺れるとどういう理屈なのかわかりませんが体中の力が抜けきって立てなくなり気持ち悪くて嘔吐したくなります。
私は岸辺にたどり着いたものの、しばらくはゴール地点にも帰れずに虚脱状態で気持ち悪くてうずくまっていました。
この虚脱が泳いでる水の中で襲ってきていたらもう完全にアウトだったわけで、本当にあと1~2分で沈み込んでサヨウナラだったと思います。
偶然に助かった命。
でもこの年の夏の一カ月間は、まだまだ何度も死の影が目の前に現れるのでした。
0009-ライフガード(死の目前の話1):終
Part2へ続く

