前回のライフガードで死にそうになった時のお話の続き(Part2)です。
今回も初めにライフガードに関する紹介を少ししましょう。
今度海へ行った時に監視塔の周りを見てもらうとわかると思いますが、普段ライフガードが待機している監視塔の前には、前回紹介したレスキューチューブやロングボードなどがきれいに並べてあるはずです。

海での水難者を発見した際にダッシュで海へ向かいながらすぐに手に取れるように整理して置いてあるのです。
そしてヘッドアップクロールで近づいたら、
①まずレスキューチューブを水難者の身体に巻き付ける
②自分はレスキューチューブに紐で繋がったタスキをかけたまま泳いで水難者をひっぱって浜まで帰る
というのが基本の流れです。
次回、海で思いだしたら見てみてください。
夏の海と太陽は人を狂わせる
真夏のビーチで丸1カ月を過ごしてみた率直な感想です。
夏の海といえばナンパ。
男と女の出会いの場として色と欲が最高潮にうねりまくっている場所です。
ライフガードのバイト連中も中にはナンパ目的で初めから来てる人間もいますが、前回書いたように純粋にサーフィンと海が好きで来てる奴とか、トライアスロンの為に体力増強の為に来てるのとか色々なので、ナンパな連中から夜にナンパに出かける誘いを受けても最初は自分の道を追求すべく出かけたりしなかったのに、8月の前半も終わらぬうちに結局は皆がノリノリでナンパへ出かけるようになります。
もうモレなく全員です!

私はというと、大人の今は人との関わりをシラケた感じで遠くから客観的に傍観している事が多い人間なのですが、若いころは仕事先では可能な限りそこの色に染まるようにしていたのでノリノリで皆と一緒に参加しようとしていました。
ただし水泳訓練で毎日死にそうな位にヘトヘトになり21時には泥のように爆睡する毎日だったので、せいぜい「中5日」のローテーション位で参加していました。(まるで野球チームの大エースです。笑)
また、現地のお役人(観光課)が時々浜辺の監視塔に仕事でやってくるのですが、お堅い仕事にもかかわらずチャラい私服に軽~い感じで「今日はかわいいお姉ちゃんはいる?俺も一緒に夜どこか行こうよ!」と本気で言ってきます。
夜になると海近くのコンビニの回りはナンパしたい男とされたい(のかどうかわからないけどフラフラしてる)女の子達で大盛況で、女の子をめぐっての男同士のケンカが毎日のように繰り広げられてます。
とにかくすべての人々が欲望に従って狂ったように暴れているのです。
中でも特に印象的だったのは、毎日ベンツのオープンカーでどこからともなく現れるオヤジで、日に焼けたぷよぷよの体に金のネックレス・金の時計をして、浜で四輪バギーを疾走させては興味に駆られたギャルをバギーやらベンツやらに乗せてはどこかへ走って行く事でした。
一度、僕らのいる浜にバギーでやってきて、女の子に「今日来たばかりなんだけど(実は毎日いる!)バギー乗ってみる?」と言っているのをたまたま近くで聞いていたら、「お兄さん達も大変だろうからコレあげるよ!」とサッと急にジュースを渡されて、『実は毎日いるじゃん!』と言わせない為の口止め料をくれたその速さには実に感嘆しました。
金持ちでヒマなんだろうが、ただただ悔しいのと羨ましいのとで実に印象深いオヤジでした。

その日がやってきた! 水難者発見!! 初出動!!!
私は前回書いた通り、ほとんどの日をメインビーチから離れた所にある幅30mくらいの小さなビーチで2人きりでライフセイバーをしていたのですが、ほとんど子供連れのファミリーが浜で砂遊びをしているばかりなので、救助の仕事などはまず発生せず、自分自身が沖で泳いで楽しむ事がほぼ毎日の仕事となっていました。
そんなある日、少し風があり浪も引き潮で「遊泳注意」の黄色い旗(青はOK、赤は禁止)が出ていた時に、ふと気が付くと浮輪に入った子供2人を連れたお母さんが波打ち際より沖側でこっちに向かって必死に手を振っていました。
どうやら子供の浮輪が風を受けて沖へ押されて、更に引き潮でお母さんが引き留めるのもむなしく少しずつ沖に流されつつあるようです。
(※ほとんどの方が「引き潮」には注意が必要なのはご存じだと思いますが、意外と要注意なのは実は「風」なのです。特に浮輪とかしていると風でかなりの影響を受けて簡単に沖へ流されます)
「助けに行かねば!!」
ついに初出動です!!
相棒のセイバーに声をかけて(待機させ)、ダッシュでチューブを手に取って全速力で走りながらタスキをかけ、そのまま親子3人に向かって走りました。
頭の中では映画の主人公の大逆転の攻撃が今まさに始まった時のような、軽快でカッコイイ音楽が鳴り始めます!

「俺がやらなきゃ誰がやる!!」
のヒーローの世界です。
走って行った勢いのまま荒波の海へ飛び込みヘッドアップクロールで泳いで親子に近づき、ライフチューブを子供に巻き付け、お兄ちゃんとお母さんは弟くんの浮輪につかまらせて、
「もう大丈夫ですから! 浮輪を絶対に離さないで下さいね! OKですか!?」
と声掛けしました。
どうやら皆溺れてないし意識もハッキリしています。
さあ、ではこいつらを浜へ連れ戻そう!
初の人命救助に意気揚々と私は泳ぎ始めました。
おおっ!まさにライフセーバーです!!
・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・重い!!
良く考えたら状況は前回書いた「水泳の特訓」を上回って厳しいです!
引き潮(流れが逆流)に向かい風も強く、さらに私の身体から後ろに伸びたロープの先には人が3人もぶら下がっているのです。
前回同様に「陸上競技」で例えるならば、向かい風の中、タイヤを3本引き吊りながら、動く歩道を逆走してるようなものです。
全然前に進みません!!!

泳いでも泳いでも浜に近づかず焦るし、焦ると泳ぐリズムが崩れて更に進まなくなるのでパニックとなり更に泳げなくなる悪循環。
早くもヘッドアップクロールは力尽きて平泳ぎとなり、更に体力が尽きて何度も海水を飲み込み、前回書いた「脱力感」「嘔吐感」が徐々に襲ってきました。
確実に溺れつつあります。
(ライフガードがそんなんでどうする!?って感じると思いますが中にはそんな奴もいるのですよ)
ただ、今回は「特訓」の時と違って溺れたら私1一人が死ぬだけではなく、後ろにいる親子3人も巻き添えになってしまいますし、きっとこの人達の父親(夫)も今頃心配しているに違いありません。
父親は私が溺れたら一気に奥さんと子供2人を失ってしまうわけです!
「もう俺の命が尽きようともなんとかこの親子だけは浜に届けなくては!!」
そんな想いだけで必死に泳ぎもがいていました。
「・・・・・・・・・・・・・・」
「いや、それにしてもこいつら全然泳ごうともしねぇな!!」

面白おかしく書いてますけど、恥ずかしながらマジで死ぬ手前の「風前の灯火」でした。
本当に死にそうで必死なのにもかかわらず後ろの親子は全く危機感なく、ただただ私に助けられるのを期待して超お気楽・脱力モードなのです。
「体力が完全に尽きて泳げない状態なのに足がつかない!」という恐怖と絶望感。
家族を心配して死にもの狂いで探しているはずのパパ
でも、私の気持ちが諦めで途切れそうになりつつあったその時・・・

どうやら浜辺にいるパパがこちらに気が付いたようです。
きっと愛する家族を助ける為にパパは飛んでくるに違いありません。
そうすれば無事この家族を救う事ができるし、何より俺も助かるかもしれない!
情けないですがとりあえずここは彼らのお父さんに期待しまくりです。


「えええぇぇぇぇぇぇっっっ!?」
父親であればこの救助の状況を見て、きっとマッハの勢いでやってきて私を押しのけてでも妻と子供を助けようとするだろうと想像していたのに・・・パパらしき人物はニタニタと笑いながら楽しそうにビデオカメラを回してやがるじゃねーか!!
こうなってみると、そもそも遊泳注意の旗が出てるのにアホみたいに浮輪で沖へ行っちゃう子供も!そのガキの管理をちゃんと出来てなかったアホな母親も!責任を微塵も感じずに命がけの救助を笑ってビデオ撮影しているアホな父親も!・・・もう怒りの対象に早変わりです!!!
自分の無能ぶりを棚に上げておいてなんですが「超ムカついてきました!」笑
結果的に「楽しい家族イベント」として終わった一連の出来事の中で、真剣だったのも本気で死を心配したのも私1人だけだし!!

いや、今回に関しては私が助かって本当に良かったです。
「私が泳ぎが上手くないのが悪い」という問題点はありますがこれで死んでいたらあまりにも惨めで悲しく死にきれない・・・。
無事に生還できて本当に良かった!!
でもまだまだこの夏は死神の誘惑が止まりません。
次回ついに修羅場が訪れます。
0010-ライフガード(死の目前の話2)「水難者発見!初出動!!」:終
(Part3へ続く)

